幼い頃から小児喘息を患っていて、病院の匂いをかぐと安心するような子どもでした。そんなふうに病院が安心できる場所だったせいか、自然と看護師を志望するようになりました。
看護学校を出て病院に就職するときに小児科を希望したのですが、配属されたのは産婦人科でした。その後、助産師になるために1年間勉強をして資格を取って病院に戻り、通算6年間、奈良県の周産期医療センターに勤務しました。結婚を機に退職して夫の任地である徳島県、千葉県、フランスに帯同し、第3子を出産したのはフランスでした。引っ越しは7回です。日本に帰り、乳児訪問員として2年ほど仕事をしていたところにタイ赴任の話が舞い込んできたんです。仕事に充実感を感じていたので、やめたくなくて抵抗したのですが、そうもいかず同行することになりました。
タイで何かできないかなあとネットで探していたところ、バンコクでボランティアの助産師さんが活動していらっしゃることがわかり、連絡をとったんです。それが日本人会の出産準備教室でした。2018年4月にタイに来て、翌5月頃から活動に参加しています。
最初はおっぱいミーティングの個別相談を見学させてもらっていたのですが、その助産師さんが6月に本帰国することが決まっていて、私が活動を引き継ぐことになりました。出産後のお母さんたちの悩みは、母乳や赤ちゃんの発達についてで、それは日本にいる方もタイ在住の方も変わりありません。ぜんぜん違うのはサポート体制です。日本にいれば、だいたい2週間から1ヵ月後に検診があり、2ヵ月目には助産師などが自宅を訪問する赤ちゃん訪問があります。
地域に相談室や電話で相談できるシステムがありますし、助産院などもあって、困ったときにかけつけることのできる場所や方法が身近に存在しますが、バンコクで日本人が利用することのできる相談場所といえば国際病院の母乳外来など、非常に限られています。
ということでパパ頼みになります。そんな事情も背景にあるとは思うのですが、バンコク駐在のパパは出産や子育てに対して意識が高い方が多いと感じました。海外なので強いのだと思います。あのときに出産された方は大変でした。日本に行くことも実家から来てもらうこともままならなかったので、実家のサポートもない。ですから、のっぴきならない場合はお友達として個人的にご自宅を訪ねて相談にのることもありましたが、学校が休校になりわが家も家に3人の子どもがいるという厳しい状況でしたので、オンラインに切り替えて出産常備教室とおっぱいミーティングの活動を続けました。日時を決めて受けていたLINE相談も、一時はいつでもどうぞということにしていました。
産後のお母さんを孤独にしてはいけないです。人間は集団で子育てする生き物で、誰かと会う、話すことができないことでとても不安になります。周りに子育てする人がいると、それを見て自分もこれでいいんだ、こんなふうに育っていくんだとわかり安心できます。コロナ禍でそれができなかったので大変で、泣いて相談してこられる方もいました。もし誰とも会えない場合は日本のご家族とか親しい人とビデオ通話したりするのもいいんですよ。2019年から「じょさんしGLOBAL.Inc」の相談員スタッフとしてオンラインで相談を受けたりしていますが、それに加えて、地域のお母さんと赤ちゃんを訪問したり、乳児健診のサポートなどができたらうれしいです。母乳ケアをはじめ、周産期と赤ちゃんのいるご家庭の生活全般を支援していきたいですね。
乳幼児睡眠アドバイザーの資格も取得しました。世界的に赤ちゃんの睡眠に対する意識が高まっていますが、日本は世界主要国の中では一番睡眠時間が短いんですよ。夜泣き相談、ねんねトレーニングなどのご相談に対応しています。赤ちゃんとお母さんの生活を整える睡眠についてもお手伝いできればと考えています。
タイに暮らして日本人会の出産準備教室に関わることによって、視野が広がりました。オンラインという方法も普及していますので、海外に住んでいる日本の方たちの力にもなっていきたいと思っています。