タイのお菓子は二度おいしい
連載
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カオニャオ・マムアン
夏の盛りは旬の完熟マンゴー。
季節もののオックロンも味わいたい
トンロー通り入口にあるマンゴー店メー・ワリーのカオニャオ・マムアンข้าวเหนียวมะม่วง。マンゴーはナムドークマイ。オックロンは3月~4月にかけて店頭に並ぶそうです
一年中途切れることなく出回るタイのマンゴーですが、最盛期は真夏から雨季の始まりで、中部タイではおよそ3月から6月が旬。そんなわけで、完熟マンゴーにもち米を添えたカオニャオ・マムアンは夏のデザートです。

もう30年以上になる昔、タイ人の家庭にホームステイしたことがありました。木造家屋の二階屋にエアコンはなく、あまりの暑さに食欲を失った。そんなとき、少しでも何か口にと買ってきてくれたのが初めてのカオニャオ・マムアンでした。甘いマンゴーともち米は不思議と喉をとおり、毎日食べて元気を取り戻すことができたのです。

タイのマンゴーの種類はさすがに豊富で、販売用に栽培されている品種だけでもおよそ20種類。その中でカオニャオ・マムアンのマンゴーといえば、ナムドークマイとオックロンの2種類とされています。
ナムドークマイ(1個約450g)とオックロン(約200g)。ラートプラオ区の老舗ヨートトーンの完熟マンゴー
ナムドークマイは年間を通して市場にありますが、タイで古くから栽培されてきたオックロンは夏の盛りの3月~4月が旬の季節もの。実は小ぶりで、熟しても鮮やかな黄色にはならず、果肉も白っぽくて地味な色合いです。大柄な勾玉で押し出しのいいナムドークマイと比べると見劣りするのですが、タイの人たちはオックロン推し。その味わいは何ものにも代え難いと言います。完熟のオックロンは驚くほど果汁がたっぷりで、見かけによらない甘さと爽やかで豊かな香りが特徴です。

カオニャオ・マムアンのもう一方の主役、甘いおこわカオニャオムーンは、蒸したてのもち米に砂糖と塩を溶かしたココナッツミルクを混ぜて蒸らしたもの(”炊く”ではなく”混ぜる”)。そのままでも独立したお菓子に数えられ、カスタードや魚のでんぶをのせたおはぎのような伝統菓子もあります。

カオニャオムーンはキアオグー(蛇の牙)というほっそりした品種のもち米を用い、うるさがたの料理書によれば、古米が望ましいといいます。米が崩れにくく仕上がりが美しいからです。米を水洗いするときにミョウバンを用いてやさしくこするように洗うのも、透明感とツヤを出すための昔ながらの知恵だそうです。

今年もまた、お世話になった家族の顔と薄暗い台所の匂いをなぞりながら、カオニャオ・マムアンを味わう季節になりました。
文・写真/ムシカシントーン小河修子
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