タイのお菓子は二度おいしい
連載
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カノム・ルームグルーン
”飲み込むのを忘れる”という名の舌の上でとろけるお菓子
カノム・ルームグルーンขนมลืมกลืนといえば白いココナッツミルクのクリームをのせたお菓子のイメージですが、タイ菓子店ガオピーノーンเก้าพี่น้องのはカラフル
絞り出しのクリームがちょんとのっていて、一見、西洋菓子のように見えますが、これもタイのお菓子。タイ菓子には”イモムシ”とか”ミズオオトカゲの玉子”といったお菓子らしからぬ名称が散見されて、そのセンスの源をあれこれ考えるのも楽しいものです。カノム・ルームグルーンも私的に”おかしな名前のタイのお菓子”に分類しているもののひとつで、「ルーム」は忘れる、「グルーン」は飲み込む。つまり「飲み込むのを忘れる」という意味なのです。命名の由来は、おいしすぎて飲み込むのを忘れてしまうからという説と、柔らかさゆえに飲み込むのを忘れてしまうからという説の二つがあるそうですが、さてどちらでしょう?
本体は緑豆粉製、上のクリームはココナッツミルクと米粉を煉ったもの
ゼリーのように見える本体は、緑豆の粉を水で溶いて火にかけて煉ったペースト状で、片栗粉をかために煉ったような食感です。緑豆の粉はタイ語でペーン・トゥアキアオ、別名はペーン・サーリム。日本で緑豆粉は春雨の原料として知られていますが、タイではサーリムという春雨状のお菓子を作る粉なのでそうよばれています。

トッピングのクリームは乳製品ではなくて、一番搾りの濃いココナッツミルクに米粉(上新粉)と緑豆粉を加えて煉ったココナッツクリームで、塩味。上に散らした、カリッと炒った緑豆がアクセントになっています。

カノム・ルームグルーンはどこでも売っているお菓子というわけではあるませんが、数年前に放映された「United We Meet Again ~運命の赤い糸~」というBLドラマで注目を集めました。一目会ったときから運命的なものを感じ惹かれ合う大学生の男の子二人のラブストーリーで、料理上手な新入生パームは水泳部の部長ディーンに食べてほしくてせっせとタイ菓子を作ります。全編で7種類のタイ菓子が登場し、その映えある1回目。初めてディーンに食べてもらったお菓子がカノム・ルームグルーンです。このドラマのおかげでタイ菓子の記事をネット上でよく見かけるようになりました。
文・写真/ムシカシントーン小河修子
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