タイのお菓子は二度おいしい
連載
85
カノム・キーヌゥ
しっとりほろほろ花の香ふわり
上品な味わいの「ネズミの落とし物」
ジャスミンの香りが口中にふわりと広がるカノム・キーヌゥขนมขี้หนู
辛いトウガラシのタイ代表、小粒のプリッキーヌゥは先細りで、キーヌゥ(ネズミのフン)の連想も腑に落ちますが、しかしお菓子のキーヌゥはほろほろの小さな粒状。強いて言えば粘り気を差し引いたきめ細やかな道明寺粉でしょうか。相似性からすれば別名のカノム(菓子)サーイ(砂)に軍配が上がりそうですが、キーヌゥのほうがとおりがいいようです。

カノム・キーヌゥはほろほろでもパサつかずしっとり。舌にのせると花の香りがほんのり広がり、淡白な甘さで上品な味わいです。
ほころび始めたジャスミンの花を水に浮かべふたをして一晩。
香りをうつした水で米粉をこね、シロップを作ります。
材料はうるち米の粉(上新粉)に砂糖と水だけ。ですがその水はジャスミンの花の香りをうつしたナムローイドークマリ。萼をはずして、ジャスミンの花が上向きになるように水に浮かべふたをして一晩(約6時間)おき、香りを含ませた水のことです。タイ菓子のレシピ本によると、水4カップにつき20〜25個の花が目安とのこと。ジャスミンは夜に強く香るため、庭木から摘むなら夕刻。一方、市場で買うならできるだけ朝早く。前日の夕方に摘んだ花が店頭に並ぶからだそうです。花は咲き始めたばかりの開ききっていないものを選び(上の写真の花弁は開きすぎています)、傷つけないようにそっと扱います。

このジャスミンの花の水でシロップを作り、次に同じ香りを水を使って米粉をこねるのですが、こねると言っても水は少量なのでしっとりした粉状。それを薄布を敷いた蒸し器で蒸し上げたら、シロップと合わせて手早く混ぜ、ふたをして約30分おいてからフォークで耕すようにして細かくほぐし、細く削ったココナッツをのせて供します。

米粉は蒸すことで味わいが深まるのでしょうか。花の香りの奥に馴染みのある米の味と香りが、しっかりと感じられ、ならば煎茶にも合いそうと、久しぶりに古い茶器を取り出して、いつもより丁寧にお茶を淹れ、薄手の茶碗でいただきました。
文・写真/ムシカシントーン小河修子
Copyright © Japanese Association in Thailand. All Rights Reserved.