トゥルッ・チーン(ตรุษจีน)とタイ語でいう中国正月(春節)は、今年は2月10日。中国にルーツを持つ人が多いタイではこの時期になると、赤や金の飾りがあふれてハレの日が近いことを知らされます。スーパーマーケットにも春節菓子の特設コーナーが設けられ、バナナの葉で包んだピラミッド形のもち菓子カノム・ティアン、パイ皮饅頭カノム・ピヤ、カラフルな5種類の乾き菓子ジャンアップなどが山積みにされて、賑々しく華やいだ雰囲気です。
カノム・プイファーイは、カノム・ティアンやカノム・ピヤと同様、年間をとおして販売されていますが、春節コーナーにも並ぶお菓子のひとつで、ふんわりとふくらむところが「繁栄」や「発展」に通ずるからのようです。
昔ながらのレシピでは、材料は薄力粉とアヒルの卵、砂糖、それにジャスミンの香りをうつした水(ナムローイドークマリ)か香料。ベーキングパウダーは用いず、その代わりにマナオ(ライム)の果汁を少量。酸性の果汁はメレンゲを中性化し安定させ、気泡を消えにくくするそうです。プイファーイは綿毛のことで、弾けた綿の実の、もこもこした繊維のかたまりをいくつか束ねたコットンフラワーのように、表面が割れるのが望ましい仕上がり。
そのためには火加減が大切で、蒸し器を強火で熱して蒸気をしっかり立てた中に生地を入れたら、後は静かに沸くくらいの火力で蒸すこと。火が強すぎると普通の蒸しパンのように表面が平らになってしまうそうです。間違いなく割れを作るために、生地の表面に楊枝などで十文字を書いてから蒸すというレシピもありました。
食感は心もとないぐらい軽く、ひきはありませんがほどよくしっとり。特筆すべきは生地のきめ細かさでしょう。口に入れるとジャスミンの香りがふんわり。バニラ風味などもあります。お茶と一緒にいただきたい、味も面立ちもやさしい蒸し菓子です。